【レビュー】アーケード版天地を喰らう

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ー『偶然なのか才能なのか』ー

熱量がとにかく半端ない。
このゲームは漫画原作なのだが、オープニングから一枚絵を多用してド派手に原作再現をしている。フォントまで漢字を多用して作り込んでいるのは当時としてはかなりのこだわりだと思われる。
ゲーム内容はベルトスクロールアクションなのだが、操作や挙動がかなり特殊で、攻撃するのに左攻撃、右攻撃とボタンで分けられているし、なんと上下移動が3レーンに分かれていて、隣のレーンに移動するまで途中で停止する事が出来ない。戻る動作は普通にできます。

今ならクソゲーと言われかねない仕様だが、なんとこのゲームはこの独特な操作が逆に魅力的なのである。
操作キャラは常に馬に乗っているのだが、このビジュアルと前述した操作性が騎乗して戦う雰囲気を見事に表現していて、開発者のセンスをひしひしと感じるのがとても気持ち良い。
「真空剣」と言う溜め攻撃があるのだが、攻撃ボタン押しっぱなしの溜め中は画面下にある原作「天地を喰らう」のキャラの表情が気合の入った表情で変化して、アイデアとして面白いし原作を活かした素晴らしい演出だと思う。
ボスも中ボスを含め沢山出るし、ステージクリア時のやっぱりド派手な一枚絵の演出は最高だ。開発の誰かが声優を務める、いわゆる社員ボイスも味わいがあって個人的には魅力的。とにかくやれることはやったるわい!という熱量が半端ないのである。なにせゲームオーバー画面ですら、でかでかと一枚絵とボイス付きで演出されるほどである。

しかし納期の都合なのかなんなのか、おかしなところも散見される。
まず難易度は5~6面あたりまではやりごたえはあるのだが、7面以降は明らかに簡単すぎる。理由は敵の種類が少なめで、ボスの倒し方も大体一緒なのもあるが、「策略」と言う完全無敵かつ広範囲攻撃の緊急回避技が、体力消費で何度も使える上に、キャラがレベルアップすると体力の上限が上がってしまうう仕様のせい。策略の体力消費量が変化しないので、後半のステージは策略使いまくりでクリア出来てしまうのである。
そして真空剣もやたら強いので大体これを使っていれば道中もボスも攻略できる。
良く出来ているところと脇が甘い所の差が激しすぎる。
しかし、このゲームはなんとこの欠点と言えるような所すら魅力に変換されているのだ。溜め攻撃をひたすら使うような、本来なら良くないはずのゲームデザインも画面下の原作を活かした魅力的なキャラの表情の演出のおかげでむしろ逆にアリになっている不思議。難易度は確かにおかしいが、自キャラの移動の遅さや前述した上下移動の縛り、敵のランダム挙動のおかげで常に先の展開を頭の中で用意しなければ被弾は避けられず、一定の緊張感をもって楽しくプレイ出来るのである。

人によっては単調で簡単なゲームにしか映らないかもしれないが、筆者としては「IPもののゲーム化のお手本の一つ」としてもっと評価されてもいいと小さな声で訴えたいと思います。

 

【レビュー評価 6.5/10】

レベルデザイン 4
単調さ 3
原作のゲーム化 10
熱量 10

【レビュー動画(ずんだもん&松嘩りすく)】

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