【レビュー】野狗子:Slitterhead

コメント(0)

ー「九龍城砦」ー

とは、1950~90年代に香港にあった有名なスラム街のことである。「東洋の魔窟」と呼ばれ、あらゆる犯罪が跋扈するような無法地帯であったらしい。理由は九龍城砦の領有権は中国が持っていたが、香港の統治自体はイギリスが行っていたため、管理が曖昧になり行政が行き届かなかったからのようだ。
この時代には毛沢東が2000万人以上の虐殺者数を出した文化大革命があったとんでもない時代。そのせいもあって大量の移民が規制の緩い九龍城砦に流れ込んだそう。これらの時代背景はこのゲームをプレイする上で必須と言っていい知識だと思う。
このゲームの舞台がまさに九龍城砦をモデルにしているからである。

建築法など皆無と言えるくらいカオスな建造物、そのせいで外でも日が差さない様な環境、やたら煙草を吸っている住民、パチモン感あふれる商店、胡散臭い医者など、上記の時代背景を知っているとゲーム体験が底上げされてゲームがいっそう魅力的になる。
これらのカオスな世界を題材にして繰り広げられる異能アクションがつまらないわけがないのだが、残念なことにこのゲームはその魅力を十分に発揮できていない。理由は明らかで、魅力的な設定や世界観に対して、プレイヤーがやれる事があまりにも少ないからである。

プレイヤーは一般人に憑依する能力まであるのに、やれる事は基本的には戦闘と移動とジャンプしかない。せっかく素晴らしい世界を構築しても、やれる事が少ないのでは宝の持ち腐れだろう。シナリオに関しても後半にならないとあまり展開しないので物足りない人も多いだろう。
だからといってつまらないゲームと言うわけでは決してなく、どのキャラも面白いスキルを持っていて使いたくなるキャラばかりだし、ゲームプレイもスニーキングや追いかけっこや憑依による移動や探索など、シンプルながら色々楽しませてくれる。
モンスターデザインも非常に気持ち悪く素晴らしい出来なのだが、体内に潜んでいるから細いのが基本という縛りがあるせいか、どの敵も似た印象になってしまっているのが非常に残念。

ショッキングなシーンが多いしご都合展開は多いし操作の忙しいゲームなので、とても万人にお勧めできるとは言えないが、クリエイターの頑張りは非常に伝わる作品だし、なによりお求めやすいお値段なのでぜひ多くの人がこのゲームに触れて、ボーカスタジオという国産ゲームスタジオが少しでも世間に認知されて欲しいと切に願います。

 

【レビュー評価 7/10 Good!】

ご都合展開 3
憑依システムが活かしきれてない 5
ムービー 10
世界観 9

【レビュー動画(ずんだもん&松嘩りすく)】

コメントを書き込む


Protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

まだコメントがありません。

×