このゲームの熱量は半端じゃない。
チップチューンな音楽が最高でめちゃくちゃあがるし、グラフィックはドット絵のクラシックな感じで非常に描き込まれている。
そしてゲームが進行すると同じステージ、同じ音楽でもグラフィックや音楽が8ビット風になったり16ビット風になったり変化するし、理由もちゃんとある。これが思いのほか最高で、ゲーム自体がリミックスされてるような体験で非常に心地よい。これを作り上げるのはめちゃくちゃ大変な作業だと思うし、生半可なモチベーションでは出来ないだろう。
ゲーム内容はいわゆるメトロイドヴァニアなのだが、過去の名作のオマージュが沢山ちりばめられていてクラシックゲームに対する愛情が深く感じられる。
例えば背景オブジェクトの攻撃するとアイテムをドロップする灯篭は「悪魔城ドラキャラ」からのオマージュだし、主人公が忍者だったり壁捕まり、壁キックで登るなどのアクションは「忍者龍剣伝」からだろう。
2Dアクションゲームではおなじみの「忍者龍剣伝の鳥」の様な敵も出てくるし、上下にユラユラと動いて迫ってくる「悪魔城ドラキュラのメデューサヘッド」のような敵もいる。ボスは倒すと爆発するし、崩れる足場、滑る足場など定番のギミックも登場する。
これらの点は、見方を変えれば過去作を真似た平凡な作品とも受け取れる。
実際、ゲームデザイン自体は脇が甘いと言わざるを得ない。主人公の攻撃判定は大きすぎて上方の敵、場合によっては背後の敵まで攻撃出来てしまうくらいガバガバだし、マップもこれは必要なのか?と思うくらいには冗長だ。敵配置もこれは面白いのか?と疑問に思う事も多いだろう。
更には難易度調整がかなりアンバランスで、敵である悪魔軍は設定上は人間を滅ぼすくらいには強いはずが、ゲーム中では雑魚にやられる事はまずないくらい弱い。ボスもほとんどの場合、一度攻撃方法を確認できれば攻略できるくらい弱い。反してマップのギミックは異常に難しいものが多く、プレイヤーの死因の多くは落下死か、トラップになる。
マップ攻略のためのテクニックもジャンプ中に攻撃ボタンを押すと多段ジャンプ出来る「雲踏の術」を使う場合がかなり多く、これが慣れるまで結構難しい。その上、ジャンプと攻撃ボタン同時押しやずらし押しで「雲踏の術」を出すというテクニックに気づかないと、道中は凄まじい高難易度になると思う。
プラットフォームゲームが苦手な方にはとてもじゃないがおすすめできないくらい苦戦必至である。
しかしこのアンバランスさこそがこのゲームの魅力の一つだろう。
結局のところ、このゲームが攻略出来ない理由のほとんどは「ジャンプのタイミングが分からない」と言うことになると思うので、コツさえ掴んでしまえば比較的誰でも攻略できるゲームバランスに自然となっているのである。
何度も挑戦し、無心にトライアンドエラーを繰り返して体で攻略を覚えていく感覚は、間違いなく幼いころに体験した「時間を忘れて熱中した古き良きゲーム体験」である事に他ならない。
付け加える点として、翻訳が非常に素晴らしい。ゲームの世界観を大事にしながらも日本人向けにアレンジしたと思われる翻訳だと思う。
昨今のゲームに比べると、確かに大味で完成度と言う面では疑問を感じるかもしれないが、グラフィック、BGM、懐かしいゲーム体験と、それを補って余りある魅力がある作品なのは間違いない。
このゲームは今のゲーマー、あるいはかつてのゲーマーに向けてのクラシックゲームの魂を呼び起こす「メッセンジャー」なのである。
雲踏の術させ過ぎ | 4 |
ゲームデザイン
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5 |
BGM | 10 |
クラシックゲーム愛 | 10 |
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