このゲームは戦争の物語である。
主人公のマルフーシャはオープニングからいきなり良く分からん誰かに一通の手紙を渡され、妹を家に置いて多分強制的に軍に入隊する。ここまでテキスト一切なし、ビジュアルでのみ描かれる。これが非常にパワフルで、このゲームの世界が如何に強引で理不尽かをよく描いている。
そして監査官からこう言われる。「無能な低級国民たちを国へ貢献させるのが私の仕事よ。」「我が国は隣国すべての国と戦争状態にある。」
つまりこの世界は差別があり、身分制度があり、戦争があり、徴兵があるのだ。
このように非常に重たい話なのだが、ゲーム内容は非常に軽い。基本的にはいわゆるタワーディフェンスで、右から押し寄せる敵を排除して一番左にある門を守りきればクリアだ。操作も左右移動、マウスで照準を合わせて射撃するだけで非常にシンプル。残りの操作はスペースキーで2つの装備を使用するくらい。仲間も1人しか加えられないし、コストもない。配置も編成もないのでタワーディフェンスですらないのかもしれない。敵の動きや構成も正直単調さは否めない。1ステージもかなり短く、はっきりいってゲームとして物足りない人がいてもおかしくないだろう。
しかしこのゲームの魅力は世界観と演出にあると思う。仲間にするキャラはどれも個性的で、口の悪いキャラだったとしても最終的には好きになるくらい魅力がある。たまに起こる宿舎でのイベントは短いながらもよくキャラや世界観を表現している。
例えば最初の宿舎でのイベントで、口の悪い監査官がなんと首から大きなパネルをぶら下げて「耐久値が0になると、武器が壊れてハンドガンで応戦することになるわ。」とチュートリアル的な事を言う。ギャグとツンデレするのがあまりにも早すぎるだろう。その後のマルフーシャのセリフ「ちょっとアレだけど。悪い人ではなさそう…」が監査官のキャラをよく表現している。
更に仲間を加えると、毎回宿舎に戻るたびに個性的なセリフが聞ける。戦闘でも頼れるし、レベルアップ時のアニメ演出もキャラの個性によくマッチしているのが良い。宿舎でもキャラの理解が深まるのでどんどん愛着が湧いてくるのだが、これが伏線になっていて、エンディングでは大きく心を揺さぶられる事になるだろう。開発者の精神状態を心配してしまう程である。
世界観のこだわりとして、毎回ステージ終了時に給与明細書が表示されるのが興味深い。支給内容が詳しく見れるのだが、ほとんど控除で引かれて残った支給額は毎回雀の涙だ。更にはゲーム進行に合わせてどんどん税金が増えていく。消費税や介護保険料など聞き馴染みのあるものもあり、現実を想起して苦い気持ちになるかもしれない。そしてこの残った僅かなお金で自分を強化したり、アイテムや装備を揃えなければならない。しかしそれもゲーム後半になるとお金が余るようになるくらいのアンバランスさがある。アイテム選択はよくあるカードの3択だが、ゲーム自体が比較的簡単なので、あまり工夫する必要がないのが残念。装備も1回のみの使い切りが多く、ローグライク的でもなければビルドを作り上げる楽しみもあまり無いと思う。
ゲームとしての評価は面白い!お勧め!とは言いにくい作品かと思ったが、Steam評価が90%くらいで非常に好評なので筆者が分かってないだけかもしれない。お求めやすい価格で現実の不条理を味わいたい方にはぜひプレイして貰いたいゲームです。きっとあなたも戦争なんてやるもんじゃない、と思える事でしょう。
| レベルデザイン | 3 |
| 攻略要素 | 3 |
| 演出 | 8 |
| 世界観 | 8 |
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